EIHについて

Exercise(運動)-Induced(誘発性) Hypoalgesia(疼痛緩和)

EIHとは運動中や運動後に起こる痛みと疼痛感受性の減少のこと。

トレーニング前は痛かったのにトレーニングしたらなぜか痛みがなくなった、という現象の背景のひとつ。

多くの人は運動で痛みを緩和させることができるが、短期的には慢性疼痛患者では悪化する可能性もある。

その理由は運動経験や運動期間の長さだとされる。

EIHを引き出すためには日頃から運動する必要がある。

長期的に見れば疼痛を緩和させることができるものの、トレーニングの初期段階では短期間の痛みの悪化が起こる可能性があるとされている。

EIHの特徴

EIHは痛みに対する感覚を鈍くさせることを特徴としている。

つまりEIHが効いた後では同じ刺激でも痛みを感じにくいということである。

この鎮痛メカニズムは複雑であり、下行性疼痛抑制系の働き、内因性オピオイドの働きなどが挙げられている。

EIHと運動の関係

基本的にはどんなトレーニングでもEIHを誘発することができるが、有酸素運動が最も効率的であり、最大酸素摂取量70%の運動強度が最適だとされる。

最大収縮10~30%の等尺性収縮も収縮時間が十分であればEIHを誘発することができると言われている。(つまり非常に弱い筋力発揮)

また、有酸素運動は広範囲のEIHにつながるが、抵抗運動では筋肉の収縮部位の近くや収縮している筋から離れた部位の痛みの感度を低下させると言われている。

慢性疼痛患者に対するEIH

慢性疼痛患者では1回の運動では変化しないか、増加することが多いとされており、これが慢性疼痛患者の疼痛改善治療に対する積極的な姿勢を引き出しづらくしているとされている。

慢性疼痛患者の中でも、EIHが効きやすい運動、効きづらい運動があるとされている。

広範囲に痛みを抱えている人…痛みのある部位、無関係の部位の等尺性収縮
下半身に痛みを抱えている人…上半身の動的な抵抗運動
上半身に痛みを抱えている人…関係ない部位の筋収縮

がそれぞれEIHが誘発される運動だとされる。

EIHの個人差

EIHが正常に出るかどうかは個人差が大きく、患者とのセッションの中で最適な運動を見つける必要がある。

原則としては前項を参考に。

例えばあるむちうち損傷患者は肩周辺を動かすと痛みが増し、下半身のトレーニングによって軽減した。

このように疼痛部位に対するアプローチをしないほうがいいこともある。

オピオイドとカンナビノイド

EIHの鎮痛メカニズムは完全に解明されているわけではないが、内因性オピオイドによるものというのが最も有力な説である。

しかしオピオイドに依存しない疼痛緩和も発見されていることから、現在ではカンナビノイド系の貢献も示唆されている。

カンナビノイド系とは例えばランナーズハイの際に分泌される強力な鎮静ホルモンで、20分の軽いジョギングでも促進されることが分かっている。

EIHと下行性疼痛抑制系

筋の侵害受容性疼痛や筋肉痛を起こしている場合、下行性疼痛抑制系が働くことが分かっている。

これはセロトニン作動系やオピオイド系の働きとされており、EIHと関連性がある。

EIHはこの下行性疼痛抑制系と同時に働くとより高い効果が得られるという研究もある。

反面、特に関係がないという報告もある。

慢性炎症疾患とEIH

慢性炎症疾患を持つ人では、1回の運動により炎症が悪化する恐れがある。

その炎症の悪化によりEIH障害が引き起こされる可能性があると言われている。

しかしこれは確定的な研究結果ではなく、例えば比較的EIHが働きやすいOAにおいても1回の運動で炎症性反応が出るのであり、かといってそれがEIHを阻害しているとは言えなかったりする。

したがって慢性炎症疾患とEIHの関係はより多くの研究が必要である。

自律神経とEIH

広範囲な痛みを抱えている人ほど、交感神経の活動亢進ではなく副交感神経活動低下がより痛みと関連していると言われている。

そしてその痛みがまた副交感神経活動を妨げるストレッサーとなっている。

自律神経機能は心拍変動によって評価することができ、心拍変動が大きいほど副交感神経の緊張が高まるとされている。

脳血流量とEIH

さらに痛みは脳血流量にも影響を及ぼす。

正常な脳血流を回復するためには圧受容器反射の活性化が必要となる。

したがって正常な自律神経(舌咽神経や迷走神経)の働きは脳血流量を回復させEIHを正常化させるためにも重要と言える。

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