運動誘発性の痛覚緩和(Exercise-induced Hypoalgesia)など、筋骨格系の痛みの軽減において、しばしば運動が有効な場合があります。
内因性の鎮痛メカニズムなどを考慮すると有酸素運動が効果的な場合や、近年話題になっている「エクサカイン(運動応答性の生理活性物質の総称)」をみれば、レジスタンストレーニングや等尺性エクササイズなども抗炎症・鎮痛に重要な役割を果たすと推測できます。
ただ「痛み」が持つ心理的効果を考えると、むやみやたらに運動を行えば良いというわけにもいきません。
痛みへの恐怖心があるかどうか
Journal of Strength and Conditioning Researchに掲載された研究によると、運動による痛みの軽減には、「痛みに対する恐怖心」が影響することが示唆されました。
それによると、エクササイズを処方した部位(大腿四頭筋)の運動後の圧痛閾値と、処方した部位から離れた位置(僧帽筋)の圧痛閾値の変化を検証した結果、強度の高いエクササイズを処方した場合に、大腿四頭筋の圧痛閾値が低下したことがわかりました。
全身性の圧痛閾値の低下には低強度の運動に反応が見られましたが、「痛みに対する恐怖心」が関与する可能性が挙げられ、恐怖心が低い人ほど圧痛閾値の上昇量が多いとされています。
痛みに対する捉え方
個人によって痛みの捉え方は異なるものであり「痛み」をかなりネガティブに捉える個人や敏感に感じ取ってしまう個人と、そうでない個人とでは運動の有無に関わらず、主観的な認識が異なります。
実際にエクササイズによる痛覚緩和を狙って運動を処方する場合には、その痛みに対する認識を含めてプログラムをデザインする必要があります。
すなわち恐怖回避モデルなど、過剰な運動の回避や不活動などに対する指導や運動を含めた活動そのものがどのように痛み改善に関与するか、といった教育的アプローチが必要となります。
参考文献
Hogge, R, Mascheri, M, Shurik, D, Hanney, WJ, and Anderson, AW.
High-fatigue dynamic resistance exercise induces significant hypoalgesia effect.
J Strength Cond Res 39(2): 165–172, 2025


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