私たち人間は、生涯にわたって何かについて学んだり、記憶します。
それを支える力(学習力や記憶力)は、人それぞれ異なるものであり、その違いがある意味、私たちが一つとして同じ脳を持っていないことを意味します。
ですが、脳というアーキテクチャという意味では皆同じものをもっているのであり、学習に至るまでの神経回路も共通しています。
すなわち誰しもに提供される「共通項」を見ていけば、より効率的な学習を促せるのかもしれません。
認知神経科学者のスタニスラス・ドゥアンヌは著書『脳はこうして学ぶ』(森北出版)にて、この学習者に共通してみられる因子を「学習の4本柱」と呼びました。
学習の4本柱とは
- 注意
- 能動的な関与
- 誤りのフィードバック
- 日中のおさらいと夜間の定着の繰り返し
この四つが年齢に関わらず、私たちの脳に等しくある学習プロセスの根本だと言います。
注意
寝坊してしまって時間ギリギリに到着するか遅刻するか、の状況を想像してみましょう。
このとき頭の中は相当の注意モードに切り替わっています。
認知科学でいう注意とは、脳が情報を選択し、増幅し、フローさせ、処理を深くする仕組み全てを指します。
遅刻するかしないかの瀬戸際では、世界中に溢れる情報のうち、「時間に間に合わせるため」に必要な刺激のみが選択され、さまざまな感覚情報から必須と考える情報にのみ処理のリソースが割り当てられます。
したがって、ある物事を学ぶという点では「注意」が適切な情報をピックアップするために欠かせない機能であると言えます。
ですが、その注意が明後日の方向に向いていれば、学習効率がガクッと落ちてしまうことも推測できます。
学びたい物事に対して「注意」を向けている場合、例えばそれが単語だとしますが、その情報は前頭葉まで届くそうです。
注意を向けていない対象は多くの場合、感覚回路のみで留まってしまい、そこから先のより高次の記憶や解釈のシステムまで進みづらいと言われています。
つまり学習や記憶が得意でない人は、注意の方向性やその内実が適切でない場合があります。
そのような人は、まずは「注意を払うことを学ぶ」ことが大切だとされています。
そして、学習者が注意を払えるように、指導者は絶えず適切な方向へと導くことが重要です。
注意システムについて
注意にはいくつかシステムによって構成されています。
次回はその注意システムについて検討していきましょう。
参考文献
ドゥアンヌ,S.(著),松浦俊輔(訳),中村仁洋(解説)(2021).脳はこうして学ぶ:学習の神経科学と教育の未来.森北出版.


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