凍結肩、いわゆる五十肩について
全人口の2〜5%ほどが経験すると言われる五十肩。
考えていきたいところは、トレーナーが対処できるのかどうか。
対処できるのなら、どのように対処していけばよいのか。
見ていきましょう。
凍結肩とは
五十肩は、40〜50代頃に生じる肩の痛みや動かしにくさに対して使われる、いわば通称です。
そのため、五十肩という言葉だけでは、肩の中で何が起きているのかまでは分かりません。
五十肩は一般的にその特徴的な症状から凍結肩と呼ばれます。
凍結肩とは、はっきりとしたケガや他の病気では説明できない肩の痛みが徐々に現れ、まさに凍ったように肩関節の動きが大きく制限される状態です。
英語では、
- Frozen shoulder
- Adhesive capsulitis
と呼ばれます。
Adhesive capsulitisは日本語では「癒着性関節包炎」と訳されます。
ただし、実際には単純に関節包が癒着しているだけではなく、関節包周辺の炎症や肥厚、線維化、収縮などが関係していると考えられています。
そのため、ここでは分かりやすく「凍結肩」と呼ぶことにします。
凍結肩では、肩を自分で動かしたときだけでなく、他の人に動かしてもらったときにも動きが制限されます。
これが大きな特徴です。
たとえば腱板の障害などでは、痛くて自分では腕を上げにくくても、力を抜いて他の人に動かしてもらうと、比較的動かせることがあります。
一方、凍結肩では、本人が動かしても他の人が動かしても、肩そのものが硬くて動きません。
代表的な特徴としては、
- 徐々に肩が痛くなる
- 夜間や寝返りのときに痛む
- 自分で動かしても、他の人に動かしても可動域が制限される
- いくつかの方向で肩が動かしにくくなる
- 特に肩の外旋が制限されやすい
- レントゲンでは、痛みや硬さを説明できるほど大きな変形がみられない
といったものがあります。
いずれも凍結肩によくみられる特徴です。
何でも五十肩ではない
中年以降に肩が痛くなったからといって、すべてが凍結肩というわけではありません。
肩の痛みや動かしにくさを起こすものには、
- 腱板の障害
- 腱板断裂
- 石灰沈着性腱炎
- 滑液包炎
- 変形性肩関節症
- 外傷後の関節拘縮
- 首や神経に由来する痛み
などがあります。
特に石灰沈着性腱炎では突然かなり強い痛みが出ますし、腱板断裂では腕を持ち上げる力が大きく低下します。
肩が痛い人が「私は五十肩ですかね?」と尋ねてくることがありますが、必ずしもそうではないことを可能性として持っておきましょう。
凍結肩の原因
凍結肩がなぜ起こるのかについては、現在も完全には分かっていません。
ただし、単に肩を使わなかったために固まったものでも、姿勢が悪かったために起こるものでもありません。
関節を包んでいる関節包周辺に炎症が起こり、その後、関節包が厚くなったり、硬く縮んだりすることで、痛みと可動域制限が現れると考えられています。
また、凍結肩は40〜60代に多く、糖尿病や甲状腺疾患などがある人では、発症する割合が高いことが知られています。
糖尿病がある人では、回復に時間がかかったり、可動域制限が残りやすかったりする傾向もあります。
凍結肩は自然に治るのか
凍結肩は多くの場合、時間の経過とともに痛みが軽くなり、肩の動きも少しずつ改善していきます。
ですが回復までの期間や最終的な回復の程度には個人差があります。
絶対安静というわけでもなく、かといって積極的に動かせば治りが早くなるということもなさそうです。
痛みが取れた後に、動かしづらさや硬さを残さないことを目標に置くのが良いでしょう。
凍結肩の3つの時期
凍結肩の経過は、一般に次の3つの時期に分けて説明されます。
1.炎症期 ― Freezing phase
2.拘縮期 ― Frozen phase
3.回復期・解凍期 ― Thawing phase
凍結肩のある人が全員、きれいに3つの時期を順番に進むわけではありません。
痛みと硬さが同時に存在することもありますし、どの時期にいるのか判断しにくいこともあります。
したがって、発症から何か月たったかだけで運動内容を決めるのではなく、現在の痛みや運動後の反応を見ながら考えていきます。
炎症期
肩の痛みが強く、次第に肩が動かしにくくなっていく時期です。
動かしたときだけでなく、安静時や夜間にも痛むことがあります。
寝返りをしたときや、痛い側の肩を下にして寝たときに目が覚める人もいます。
肩の痛みが上腕や肘の近くまで広がることもあります。
この時期に、硬くなっているからといって無理に肩を伸ばすと、かえって痛みが強くなることがあります。
運動中は何とか我慢できても、その日の夜や翌日に強く痛むのであれば、刺激が強すぎた可能性があります。
この時期は
- 痛みを強くする動作を減らす
- 続けられるなら肩以外の運動を続ける
- 完全に身体を動かさなくなることを避ける
ことを考えます。
拘縮期
強い痛みが少しずつ落ち着き、痛みよりも肩の硬さやつっぱり感が目立ってくる時期です。
髪を洗う、服を着る、背中に手を回す、高いところに手を伸ばすといった動作が難しくなります。
この時期には、症状を確認しながら、
- 自分の力で肩を動かす運動
- 反対の手や棒などで補助しながら動かす運動
- 軽いストレッチ
- 肩甲骨や胸郭の運動
- 痛みの少ない範囲での肩周囲のトレーニング
などを少しずつ行っていきます。
ここでも、痛みを我慢したり無理なストレッチは禁物です。
運動した後に痛みが増えたり、その日の夜間痛が強くなったりする可能性も出てくることでしょう。
回復期・解凍期
痛みと可動域制限が徐々に改善していく時期です。
肩を動かせる範囲が広がり、日常生活で困る場面も少なくなっていきます。
この時期には可動域を回復する運動に加えて、長期間使えていなかった筋肉の機能も取り戻していきます。
特に、
- 腱板筋群
- 三角筋
- 肩甲骨周囲の筋肉
- 上腕の筋肉
などの筋力や持久力が低下していることがあります。
腕が上がるようになったから終わりではなく、物を持つ、押す、引く、高いところで作業するといった動作まで、段階的に戻していきます。
また動けないが故に固定してしまった運動パターンを再教育させることも重要です。
凍結肩の治療は?
凍結肩は、基本的には手術をせずに治療していくことが多い疾患です。
医療機関では、症状に応じて、
- 鎮痛薬
- 関節内へのステロイド注射
- 運動療法
- 理学療法
- 関節内に液体を注入して関節包を広げる治療
などが行われることがあります。
特に発症初期の強い痛みに対しては、関節内へのステロイド注射が、短期的な痛みや機能の改善に役立つことがあります。
運動は、痛みを悪化させない範囲で肩の動きを保ち、回復に合わせて可動域や筋力を取り戻すために行います。
保存的な治療を続けても強い痛みや拘縮が長く残る場合には、医療機関で別の治療が検討されることもあります。
基本的にこうした管理・治療プロトコルは医療機関で実施されるため、我々トレーナーに出る幕はそこまで多くはないと言っても良いでしょう。
トレーナーが対処できるか
結論から言えば、対処できる部分はあります。
ただし、トレーナーが凍結肩そのものを診断したり、治療したりするわけではありません。
また、「この運動をすれば五十肩が治ります」と言えるものもありません。
トレーナーができることは、主に運動できる範囲を探し、身体機能の低下を防ぎ、回復に合わせて少しずつ動けることを増やしていくことです。
特に肩以外の全身のエクササイズは医療機関の業務範囲外である場合が多く、そうした棲み分けが大切です。
ウォーキングや自転車運動、下半身のトレーニング、肩に負担のかからないトレーニングなど肩を無理に使わずに行える運動を探し、全身の活動量を保つこともトレーナーの大切な役割です。
まずは医療機関への受診を勧める
肩が痛くて動かない場合、トレーナーがすべてを担う必要はありません。
一度、整形外科などの医療機関を受診してもらったほうがよいでしょう。
まとめ
凍結肩では、自分で動かしても他の人に動かしても肩の可動域が制限されます。
痛みの強い時期には刺激を増やしすぎず、硬さが主体になってきたら可動域や筋力の回復へ進みます。
トレーナーは、肩以外の運動を保ちながら、回復に合わせて肩の動きと日常動作を戻していく役割を担います。


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