日本には約2,800万人の腰痛者がいると推計されています。[1]
それだけ、腰痛の改善を求めてトレーナーを訪れる人も多いということです。
腰痛の原因は腰椎だけにあるとは限りません。慢性的な腰殿部痛の15〜30%には、仙腸関節複合体が関係すると報告されています。[2]
そこで今回は、仙腸関節がどのように安定し、その仕組みが腰痛とどう関係するのかを見ていきます。
仙腸関節に起こる問題
仙腸関節は、仙骨と左右の腸骨の間にある関節です。
歩行や立ち上がりでは、上半身の重さを下肢へ伝え、地面から受けた力を体幹へ返しています。
仙腸関節周辺への負荷を変化させる要因には、
骨盤の左右差
脚長差
腰椎や骨盤の姿勢
歩行や片脚荷重の偏り
などがあります。
さらに、多裂筋や腹筋群は体幹を支え、大殿筋、ハムストリングス、広背筋は骨盤を介した力の伝達に関わります。
これらの筋活動や靱帯への負荷が偏ると、仕事や生活で繰り返される小さなストレスが仙腸関節周辺に蓄積します。
仙腸関節の安定化要素
仙腸関節は、仙骨がわずかに前方へ傾くニューテーションによって安定性が高まります。
この安定化には、次の3つが関係します。
1.重力
直立すると、上半身の重さによって仙骨に下向きの力が加わります。
この力が仙骨をニューテーション方向へ導き、仙骨と腸骨のかみ合わせを強めます。
2.靱帯の張力
仙骨が前方へ傾くと、仙腸関節周辺の靱帯に張力が生じます。
この張力が仙骨の動きを抑え、関節の安定性を高めます。
3.筋活動
腹筋群や多裂筋は体幹を支え、大殿筋やハムストリングスは骨盤と下肢の間で力を伝えます。
筋活動による圧縮力は、仙腸関節の剛性と荷重伝達を高めます。[3]
このように仙腸関節は、重力によって生じる力を、靱帯と筋活動が受け止めることで安定しています。
腰痛改善への考え方
仙腸関節へのアプローチでは、骨盤の形を整えることだけでなく、荷重時の左右差や筋活動を見る必要があります。
片脚立ち、歩行、立ち上がりなどを確認し、どの動作で仙腸関節周辺に負荷が集中するのかを探ります。
そのうえで、体幹と股関節の筋活動を高め、左右の脚へ力を伝えられるようにしていきます。
仙腸関節周辺の筋肉をケアするだけでなく、身体全体で荷重を受け止める機能を整えることが、腰痛改善の手がかりになります。
参考文献
[1]厚生労働省.労災疾病臨床研究事業費補助金研究報告書.
[2]Cohen SP. Sacroiliac joint pain: a comprehensive review of epidemiology, diagnosis and treatment. Expert Rev Neurother. 2013;13(1):99-116.
[3]van Wingerden JP, et al. Stabilization of the sacroiliac joint in vivo: verification of muscular contribution to force closure of the pelvis. Eur Spine J. 2004;13(3):199-205.


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