一般的なイメージとして高齢者の筋肉は落ちやすく戻りづらいものだとされます。
しかし近年の研究では、高齢者であっても日頃から運動していれば筋力強化が見込めることが分かっています。
高齢者の筋肉が原因?
ミシガン大学のカールソン、フォークナー博士らは、高齢者の筋肉が衰えやすく再生しづらい原因が筋肉そのものにあると仮説を立てて、ある検証を行いました。
それは、高齢ラットと若いラットの筋肉を入れ替えるという実験です。
もし仮説が正しいのであれば、若いラットに移植された「高齢筋」は弱体化し、反対に高齢ラットに移植した「若齢筋」は正常な反応を起こすはずです。
しかし結果はその逆で、若齢ラットに移植された「高齢筋」は正常な再生能力を発揮し、高齢ラットの若齢筋は高齢さながらの低い再生能力を示しました。
若齢ラットには若齢筋も移植されましたが、それは十分な再生能力を示したとされています。
環境や神経の問題
この実験の結果は、筋肉の再生能力は、筋肉そのものの問題ではなく、筋の置かれた環境が重要な役割を果たすことを示しました。
ではその置かれた環境のなかで、どの要素が影響するかというと、その問題のひとつとして、高齢の運動神経の能力低下であることが分かっています。
運動神経というのは、一般的に言われる運動神経ではなく、脳からの命令を筋肉へと伝達する神経のことです。
この運動神経の数が加齢に伴って減少することが原因ではないかとされています。
高齢者でも筋肉は発達する
一昔前までは、高齢者は運動をしてもほとんど筋力が向上することはないと考えられてきましたが、近年では若年層と同様、運動によって筋力向上効果を享受できることが知られています。
その方法に関してはいくつか意見が別れており、若年層が行うような自身の発揮筋力の80%相当の「高強度トレーニング」が必要であるというデータや、自身の体重で行う自重トレーニングや軽い負荷もしくは無負荷でゆっくりと行うスロートレーニングが効果的であるなどさまざまなです。
ですが、基本的には運動を行うことで筋力が向上、筋肉が発達するという点で肯定されているようです。
プロテインも大切
高齢者においてもプロテインつまりタンパク質の摂取が大切だとされています。
アメリカの臨床栄養学雑誌に掲載された研究によると、BMIが30を超えるような肥満型の高齢者はプロテインへの反応がより高く、筋肉量の向上と筋力の向上が見られたといいます。
また標準的な体型の高齢者においてもタンパク質に対する反応性が高まったことが分かりました。
全体的な結果として高齢者に対するプロテイン摂取は筋肉量や筋力、その下地を作るために有効であることが分かっています。
参考
Muscle transplantation between young and old rats: age of host determines recovery
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