身体研究家目線で『ロードオブザリング』を観る

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身体研究家のなかしま (@Re2054)です。

身体研究家目線で『ロードオブザリング』をみていきましょう。

今回はロードオブザリング王の帰還のなかでも屈指の名シーン。

滅びの山の火口まで後少しのところで力尽きてしまったフロド。

「指輪の重荷は背負えないけど、あなたを背負うことはできます」とサム。

彼はフロドを担ぎ上げ火口付近まで登ってゆくのでした。

なかしま
なかしま

勇者サムワイズが主役です

ということでこのシーンを身体研究家視点で見ていきましょう。

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指輪の重荷は背負えなくてもあなたは背負えるサムの内転筋はバチバチ。

このシーンでフロドバギンズを担ぐサムワイズ・ギャムジーですが、まずフロドの体重+荷物分の負荷がかかっているわけです。

ホビットの身長が60〜120cmらしいので荷物と合わせて30kgくらいはありそう。

その30kgを抱えたままサムは滅びの山を登るんですから驚きです。

人間の歩行は自動的

人が(おそらくホビットもエルフもドワーフも)斜面を歩く場合には、単純に平地を歩くときと同じような筋活動ではいられません。

基本的に我々は脳がスタートの指令を出した後はストップがかかるまで自動的に歩けます。

これは脊髄に歩行の自動的な周期性を生み出す機構があるためです。

 脊髄に中枢パターン発生器(CPG)が歩行の周期性を支える
 歩くことは自動的に、無意識で行われる

でも指輪はフロドの脳を上回る形で歩みを止めさせてますよね。

脳にも確実に影響及ぼしますよあの指輪は。

たしかにひとつの指輪の効果を見ても、

・視力や聴覚(後頭葉・側頭葉)
・願望の増大(前頭葉・大脳辺縁系)
・堕落(前頭葉)

のように脳の働きに関係してますよね。

登山や斜面では話が変わる

とまあ話は戻りますが、平坦な道ではオートなので必要以上に筋肉が働くことはありません。

それが斜面となると話は別です。

下の画像を見てみましょう。

大腿直筋や大腿二頭筋、大殿筋といった身体の前後面にある筋肉がはたらくのはなんとなく想像がつきますが、内転筋つまり内ももの筋肉も働くのです[1]

さらに画像のように股関節が曲がった状態だと、そのほかの内ももの筋肉も地面を蹴る方向にはたらます。

 大腿直筋→太もも前面の筋肉
 大腿二頭筋→太もも後面(ハムストリングス)
 内転筋→太もも内側の筋肉

内ももの筋肉は普通は股関節を曲げたり足を締めるのにはたらくわけですが、筋肉の付く位置と関節軸の関係で機能が変化するんですね。

なので長内転筋で股関節が70°以上、短内転筋で50°以上屈曲した状態だと伸展つまり股関節を伸ばす、ここでいうと地面を蹴る方向に変化。

この働きを「筋活動の逆転」と言います。

なかしま
なかしま

中つ国の逆転を狙っているフロドたちの股関節の筋肉も逆転していたとは。

30kg担いだまま、あの岩がゴロゴロした滅びの山を登るわけですからサムの内転筋はバッチバチでしょうね。

まあ下半身全体バキバキだと思いますけど、意外とこういう場面での内転筋の働きは知られてないですからね。

ちなみに、大殿筋や大腿二頭筋(ハムストリングのひとつ)は筋肉が伸ばされているので、力発揮も高くなってます。

筋肉はゴムのような性質もあるので伸ばされたほうが収縮力が高くなることもあるんです。

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ホビット族の足の秘密にせまる

続いてはホビット族の足の秘密にせまってみましょう。

映画と上の画像の違うところはサムが裸足だということです。

どうやらホビット族というのは、足が毛で覆われているので革のように頑丈なんだとか。

たしかに全員裸足ですよね。

ボロミアやファラミアや我々人間の足の裏にはメカノレセプターといって感覚情報を集積するセンサーが沢山存在してるんですね。[2]

センサーは何種類かあるんですが、毛がある場所と毛がない場所とでは少しだけ分布が違う。[3]

つまり毛で覆われているホビット族の足裏のメカノレセプターは我々の足裏とは違うってことになります。

 無毛部→パチニ小体、ルフィニ小体、メルケル触盤、マイスナー小体など
 有毛部→パチニ小体、ルフィニ小体、メルケル触盤、毛包受容器など

ホビット族の足裏はマイスナー小体が少ないかも

サムの足裏のメカノレセプターにはおそらくマイスナー小体というセンサーがほとんどありません。

マイスナー小体は人間の足裏にはたくさんありますが、細かな形状だとか皮膚の滑りとか物を掴むのに役立ちます。

だとするとホビットは滅びの山を登るのに向いてないかもしれない、なんて思ったら大間違いです。

その代わりにメルケル触盤が豊富に存在していると考えてみましょう。

メルケル触盤というのはメルケル細胞が集まったもので、これまた形状の感知などに役立ちます。

なので、細かな違いはあれど言うほど遜色ないわけです。

なかしま
なかしま

しかも毛むくじゃらですから熱にも耐えやすい。

滅びの山の地面は熱くなってるでしょうから、ここでも有効です。

メルケル細胞は老化に関わっている

またメルケル細胞は優れもので、どうやら細胞の老化などに関わっているとのこと。

メルケル細胞の機能低下が皮膚の老化に影響し、メルケル細胞が活性化すると抗老化作用のあるオキシトシン量が増加すると言われてるんですね。[4]

このメルケル細胞の機能を向上させるには、特定のペプチドが必要になるんですが、ホビット族は1日6回も食事を摂るのでメルケル細胞もしっかり活性化していることでしょう。

肌の手入れをすることで老化を予防できる理由のひとつもメルケル細胞

※アルギニン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、ロイシン、メチオニンおよびチロシンから構成される合成→デカペプチドとよばれる

裸足で生活していても彼らにとっては何も問題ないのです。

また老化という観点で考えてみると、どうでしょう。

ホビット族は長寿ですよね。

110歳くらいまで生きるそうです。

これももしかしたらメルケル細胞や豊かな食生活のおかげかもしれませんよ。

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おわりに

ということで、身体研究家の目線からロードオブザリングをみてきました。

サムワイズ・ギャムジーの内転筋はバチバチで、かつ足は毛むくじゃらでメルケル細胞が豊富に存在しているので意外と滅びの山でも健康でいられたかもしれません。

もし滅びの山へ行くことがあったら下半身のトレーニングをバッチリ積んで足裏のセンサーを鍛えに鍛えてからいくのがオススメです。

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この記事をさらに理解するなら

  1. Donald A. Neumann著 嶋田智明・有馬慶美監訳(2005) 医歯薬出版『筋骨格系のキネシオロジー第2版』
  2. 宮本省三著 協同医書出版社(2016) 『人間の運動学』
  3. Masahiro Furukawa “Measurements of detection thresholds presenting Vibrations through hair on human hairy skin”
  4. FANCL ビューティーサイエンス研究センター 『触覚に係る「メルケル細胞」を活性化して「オキシトン」を増やす成分を発見』https://www.fancl.jp/laboratory/report/75/index.html

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