【第4回パーソナルトレーナー独学のすすめ】掘り下げと水平について

独学のすすめ
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身体研究家のなかしま (@Re2054)です。

前回・前々回と自らの考えが大切だという話をしてきました。

なにか源泉があったら、それを辿っていきましょうと。

そしてそこから掘り下げていくと何か自らの考えとなって固まってくるという話でした。

解剖学・生理学・運動学を掘り下げることも大切だという話もしました。

今回はその掘り下げについてです。

なかしま
なかしま

第3回をまだ読んでいない方はこちらから

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なぜ基礎知識が大事なのか

 最新理論の前提知識として必要
 セッションの有効性の判断に必要
 自分の手札を見直すのに必要

前提知識として必要

まずはなぜ基礎知識が大切なのかについて話していきます。

トレーニング科学や健康科学などのトレーナーにとって重要な理論は大抵、なにかフックとなる既存の知識の上に成り立っています。

そうした最新の理論や新たな見解について理解するには、その既存となる知識、前提となる知識が必要になりますよね。

その前提知識がどこからくるか、というとトレーナーでは往々にして解剖学・生理学・運動学になります。

つまり最新理論の前提知識として必要。

経験に裏付けを与えてくれる

またトレーナーは「経験的に分かっていること」も重要視されます。

自分で動いてみた結果やこれまでのセッションの経験から、どうもこれが正しいという持論が蓄積されます。

実践的な知は大いに役立ちますし、それを糧にセッションを行うのは良いことです。

その知が一般的な規範を外れていないかを照らしながら判断できるのも基礎知識があってこそです。

つまりセッションの有効性の判断に必要。

なかしま
なかしま

独自のメソッドに全く裏付けがないなんてこともありますよね。

手札を見直すのに必要

新たな理論なり経験の背景として基礎知識が絶対に必要かというと、それが無くてもセッション自体は行なえます。

ですが、クライアントはその背景まで知っていると踏んで説明を求めてきますし、基礎知識の理解が必要な場面がくることもあります。

トレーナーをやる以上、全く知らないなんてことはありませんので、今ある手札で上手にやり繰りして説明・対処していくわけです。

そうやって説明していくうちに、自分のなかでそれが事実になって1枚のカードになってしまうんですね。

説明が上手くいけばその説明がテンプレ化する。

本来は自分の手札になかったわけですから、元々は別のことを説明していたカードなんですが、利用されていくうちに自分のなかで現実味を帯びてしまって新しいラベルが貼られてしまいます。

そうなってしまうとそのカードは破棄されにくくなってしまいますよね。

さらに厄介なのが、そのやり方を学んでしまうということです。

つまり別の理論や知識を仕入れても、使えそうな手札を駆使して説明して、新しいラベルを貼ってしまえばいいのです。

なかしま
なかしま

ガワだけ見ると手札が増えたように見えるのも厄介なポイントですね。

こうしたとき、基礎知識はラベルを正しく貼り直し、正しいテキストに書き直す役目をもちます。

その場合、手札を増やすことよりもそれを堅固なものにする働きがあります。

つまり自分の手札を見直すのに必要。

こう書いてしまえば簡単です。

しかし実際には、これらの問題にぶつかったとき果たしてその根本まで立ち返ることができるのか、という課題があります。

つまり基礎が大事だと省みることができるのか、です。

そこで普段から掘り下げる意識を持っていきましょうというわけです。

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掘り下げる

掘り下げとは、考察の対象に「それはなぜか」「どういうことか」「何なのか」と問うことで物事の本質まで迫ろうという思考法です。

批判的に捉えることもひとつのポイント。

現在掲示されている課題は果たして正しいのか、その課題に対する認識・取り組み方は正しいのか、といった疑問を持つことです。

自分自身との対話のようなものを行います。

たとえば

・最新理論は果たして正しいのか、正しい理由はなぜか
・経験からくる知はどういう知識か、自分はその経験に適切にラベルを貼れているか
・正しく説明ができているか、説明されるそのものは正しいか
・そもそも正しいとはなにか

いろいろな言い方ができるかと思いますが、このようにして考えれば、自分自身に説明せざるを得ない状況になります。

説明しようとすると基礎知識が欠かせないことに思い至ります。

もしかするとこの枠組みでは説明できない、という風に思い至ることもあるかもしれませんね。

思考法について

思考法でいえば上で出てきた批判的思考いわゆるクリティカルシンキングだったり掘り下げの対にある水平的な思考などたくさんありますから、自分にあった思考法が見つかればそれで良しです。

なかしま
なかしま

基本的に僕も水平的な「いろいろな視点で考える」ことが必要だと思っています。

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水平的な思考について

ここまでひたすらに段階を踏んで考えるようなことを述べてきましたが、そうした垂直的な思考ではなく、自由な発想で多角的に物事を考える水平的な思考も大切です。

なかしま
なかしま

前回お話した僕の根本は「人間とは」ですから、世の中にたくさんある「人間とは」も知っていたほうが良いですよね

たとえば、当時花札の会社だった任天堂を玩具メーカーへと成長させ、ゲームウォッチやゲームボーイの開発に携わった横井軍平も水平的な思考の持ち主だったと言われています。[1]

任天堂とトレーナー全く関係ないじゃないかと思うかもしれませんが、ベイトソンは自然(ここでいえば業種や構造)の枠組みの違いがあっても、知の枠組みはすべての分野で同じであると述べています。[2]

だからこそ、掘り下げる意識や批判的な思考が必要になるんですね。

自由な発想・多角的な視点・分野横断的な考え方のためには、今目の前にある問題を掘り下げ、疑問にもつ必要を感じないといけません。

枠組みが同じであればそのプロセスでもって取り掛かり、そして水平的に考えていくということができるわけですね。

 トレーナーの分野を掘り下げることで、トレーナーとしての基礎知識を学べる
 その掘り下げるプロセスそのものは別の分野でも有効で、他分野の基礎を学べる
 そうして集まった知識は水平的な思考に役立つ
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トレーナーとしての考え方の終着点

デイビッド・エプスタインは著書『RANGE(レンジ)知識の「幅」が最強の武器になる』において「どの分野においても、人間の知識は急速に膨らみ、世界が互いに繋がりあっている」と述べています。

もはやトレーナーはトレーナーの分野だけやっていれば良い時代ではないのかもしれません。

これはこれからの時代さらに強まる可能性があります。

たとえばベックとコーワンのスパイラルダイナミクス[3]、スザンヌ・クック=グロイターの自我発達理論[4]、ケン・ウィルバーのインテグラル理論[5]などの観点から言えば、「意識の段階」は垂直と水平の両方の思考を行うことができるようになる段階、さらにはその上の段階に発達すると言われています。

垂直と水平に関しては現にいろんな領域ではすでにそうなっているはずです。

ですから、トレーナーも垂直思考で知識を深めつつ、その思考を水平的に活用し、最後は統合するという形を取っていくべきかと思います。

そのためには自らの知の枠組みでもって進めていく「独学」が必要なのだと思います。

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考え方は今回まで

ここまで何回かに分けて独学に進む前の大枠としての「考え方」について言及してきましたが、今回で一旦終わりにして、次回から実際の学びについてお話していきます。

次回は、「解剖学・生理学・運動学」について。

この記事に関するコメント・質問はTwitter(@Re2054)にて受け付けています。

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この記事からさらに学ぶには

水平的な思考について学ぶ

1.本書全体にわたって水平的に取り組むことの是非が書かれています。
2.多様性、複数の視点の重要性について書かれています

意識の段階について学ぶ

1.スパイラルダイナミクスをもとにしたインテグラルダイナミクスやインテグラル理論が学べます
2.意識段階や意識構造、インテグラルマインドフルネスについて学べます
・自我発達理論は無料で閲覧できます
3.同じくインテグラル理論の入門編ですが全体像をつかむことができます。

参考図書

1.デイビッド・エプスタイン著 / 中室牧子解説 /東方雅美訳『RANGE(レンジ)知識の「幅」が最強の武器になる』日経BP(2020)
2.グレゴリー・ベイトソン著 / 佐藤良明訳『精神の生態学』新思索社(2000)
3.ケン・ウィルバー著 / 加藤洋平訳 / 門林 奨訳『インテグラル理論 多様で複雑な世界を読み解く新次元の成長モデル』 日本能率協会マネジメントセンター(2019)
4.スザンヌ・クック=グロイター著 / 門林 奨訳 『自我の発達:包容力を増してゆく9つの段階』日本トランスパーソナル学会(2018) 
5.鈴木規夫著 /久保隆司著 / 甲田 烈著 / 『入門インテグラル理論 人・組織・社会の可能性を最大化するメタ・アプローチ』日本能率協会マネジメントセンター(2020)

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