脚に関連する疾患は数多くありますが、ふくらはぎに痛みと腫れを感じる場合、深部静脈血栓症の可能性を疑う必要があります。
深部静脈血栓症とは
深部静脈血栓症は長時間のフライトや車両による移動など、長いあいだ座っていたり脚の運動を起こさなかったり、水分補給が乏しかったりすることで、下腿の血流が停滞し深部静脈に血栓ができる疾患です。
ずっと動いていないときと動き過ぎのときに起こる
基本的に健康で活動的な人に発生することは極めて稀ですが、激しい運動をしている人に発症することがあるとも言われています。
深部静脈血栓症になった後には静脈の機能障害やうっ血が起こることがあり、よく運動をする高齢者のふくらはぎ痛の原因となったりします。
静脈瘤との見極めも大切
ふくらはぎに静脈瘤がたくさんできている場合にも、こうした症状が見られますが着圧ストッキングなどを履くことで軽減します。
深部静脈血栓症自体はこれまでそれほど問題視されていませんでしたが、重篤な合併症があるために近年では十分な注意喚起がなされています。
深部静脈血栓症の合併症とは
深部静脈血栓症の一番の合併症は肺血栓塞栓症です。
深部静脈で出来た血栓は血流に乗って肺動脈まで届きます。
そこで肺動脈が血栓によって閉塞されると肺血栓塞栓症となります。
肺血栓塞栓症の原因の多くを占めるのが深部静脈血栓症
肺血栓塞栓症の90%は下半身の静脈からくるものだとされており注意しなければなりません。
車で寝泊まりしたことが原因で亡くなることがありますが、それも深部静脈血栓症と肺血栓塞栓症が合併した結果だとされています。
この2つの疾患は合わせてエコノミークラス症候群と呼ばれています。
女性はリスクが高い?
妊娠中の女性や経口避妊薬を服用している女性は、服用していない女性に比べその危険性が高まることが研究により分かっています。
妊娠中および産後の女性
妊娠中および産後12週間の深部静脈血栓症の発症リスクは年間1万人あたり妊娠中で5~20人、産後は40~65人だとされています。
経口避妊薬を服用している女性
また、経口避妊薬を服用していない女性の深部静脈血栓症の発症リスクは年間1万人あたり1~5人であるのに対し、服用女性では3~9人と報告されています。
したがって、経口避妊薬を服用している女性や妊娠中・産後の女性は十分に気をつけましょう。
深部静脈血栓症が発生しやすいのは?
筋肉の静脈内で最も深部静脈血栓が発生しやすいのは、ふくらはぎにあるヒラメ筋の静脈叢です。
足の血液は重力に逆らって心臓に戻る必要がある
これらの静脈では心臓からの圧力はほとんど消失してしまい、そこから重力に逆らってまた心臓に血液を戻すために、主に筋のポンプ作用に依存しています。
したがってふくらはぎの筋肉群が機能不全に陥るなどして、安静の時間が長くなると血液が停滞して深部静脈血栓リスクが高まります。
激しい運動にも関連している。
激しい運動にも関連しており、ふくらはぎが痙攣したマラソンランナーが数日中に発症したり、スキー選手が翌日に発症したりと、例えば筋の微細な損傷や脱水など、運動に付随する何らかが静脈血栓形成に関与する因子であると思われます。
症状は?
ふくらはぎの筋肉に深部静脈血栓症が起こると、特に歩いているときや走っているときににむくみやふくらはぎの熱感、ハリ、痛みを感じます。
肺血栓塞栓症を合併していない場合は、発熱や脈が早くなることも分かっています。
浅呼吸、胸痛、立ちくらみなどが起きたら即座に病院へ
肺血栓塞栓症が起こると、呼吸が浅くなり、胸痛を伴い、喀血や立ちくらみ、不安感やふらふら感が起こることがあると言われています。
こうした症状を自覚したときは即座に病院にかかりましょう。