膝のふたつの関節
膝関節は単一の関節のように思えますが、大腿骨と脛の骨で構成される大腿脛骨関節と、膝のお皿と大腿骨で構成される膝蓋大腿関節という2つの関節からなります。
このうち膝蓋大腿関節は亜脱臼や関節の適合不良が起こり得ます。
これが繰り返されることで、膝の不安定感や痛みが生じる膝蓋骨不安定症へと繋がります。
膝蓋骨不安定症
元々、膝蓋骨(膝のお皿)は骨の形態や付着する腱の方向といった要因によって外側に亜脱臼することが多い特徴があります。
これが繰り返されると膝蓋骨不安定症へと繋がり、ジャンプする瞬間や着地時に膝の不安定感や膝前面の痛みが生じます。
症状の強い例ではジャンプ力が低下したり、大腿四頭筋の萎縮などをきたします。
繰り返される亜脱臼によって関節表面の軟骨の変性が進むと、階段の上り下りや椅子からの立ち上がりなど日常生活でも痛みが現れます。
原因
多くの場合、膝蓋大腿関節が正常に比べて緩い人になりやすいとされています。
そのため圧倒的に女性に多く、関節弛緩性の高さや膝蓋大腿関節の安定に重要な大腿四頭筋の弱さが原因とされています。
症状
症状としては前述の痛みや不安定感の他に、膝を伸ばした状態で膝のお皿を手で外側に動かすと「脱臼しそうな不安感」の自覚症状があります。
重症例では、膝関節を自身でゆっくり屈伸させると、膝蓋骨が外側方向に亜脱臼したり整復されたりするのが確認されます。
さらに関節面に繰り返しのストレスが加わって軟骨面の変性が進んだ例では、膝のお皿を圧迫しながら動かすと疼痛や轢音が起こります。
炎症所見が強い場合や軟骨変性が著しい場合では関節水腫も認めることがあります。
治療
膝蓋大腿関節の不安定性、弛緩性、過度な可動性がこの疾患の根本であるため、膝蓋大腿関節の不安定を生じないようにすることが治療の原則になります。
骨の形態や腱の付着部位などの解剖学的要因を変えることはできないため、膝蓋大腿関節の安定性を向上させる方法としては大腿四頭筋の筋力強化になります。
炎症所見が見られる場合にはスポーツ活動レベルを落とし、運動後のアイシングを徹底します。
不安感が強く、スポーツが継続ができない場合には、膝蓋骨の外側への異常可動性を制動している内側膝蓋大腿靭帯の再建術などの手術的治療が行われることもあります。